訪問看護って奥が深い!

30代、ナース。独身で仕事にプライベートに好きなことばかりやっています。4年前から立ち上げに関わった訪問看護ステーションで働いています。訪問看護の素晴らしく奥が深い日常をお伝えします。

訪問看護での医療処置 胃ろうの管理1

 訪問看護での医療処置について、注射や点滴以外だと何があるのかなと考えたときに、よく、医療処置の管理で依頼がくる内容では経管栄養でしょうか。

 個人的には、経管栄養について一人一人がどう考えているのか、が一番大事とは思っていますが、今回は私が訪問看護でどのように管理に関わっているか、についてです。

 まずは、経管栄養とは、口から食べるのが難しくなった時に鼻から管をいれて(経鼻胃管)、もしくは胃や腸に直接アクセスできるようなチューブ(胃ろうや腸ろう)を挿入して、そこから栄養を取ることで栄養管理を行う方法です。

 胃ろうは嫌だけど、鼻から管を入れての栄養はやってほしいという意向を聞くことも多いのですが、経管栄養法の手段の違いなので、栄養を通すチューブを入れるときの体の負担の違いはあるけれど本質的には同じというのが私の認識です。もちろん、経鼻胃管にも胃ろうにもそれぞれに利点、欠点があります。

 答えがないことが多く(急性期医療の現場などでは経管栄養が必要な場面もあるので)、各個人で考え選択したことが答え、と思いながら私自身も、本人やご家族がどのように考えてきて、どの選択をすると人生を全うできるのかを少しでも一緒に考えていくことが役割だと思って関わっていました。一つ一つの患者さんの選択に誠実に向き合わなければ、ご本人だけでなく家族、そして自分自身にも後悔が残ります。

  実際に在宅での経管栄養に関しては、点滴のように看護師が実施する手技自体はほとんどありません。栄養剤や食事を入れる、お薬を入れる、などはご家族が行っているからです。もちろん、ご家族がその手順ができるようになるまでの指導は病院で習ってますが在宅でも継続して行っていきます。

 胃ろうの周りを洗うのも、訪問の時には実施しますが、訪問がない日はご家族だったり、ヘルパーさんに洗ってもらいます。汚れてたら拭く、くらいでも大丈夫なことも。

 訪問の時には、皮膚のトラブルがないかを見たり、洗う方法の相談、大事なことは栄養の量や形態が今のご本人の状態に合っているか、経管栄養投与を安全に出来ているか等をアセスメントして医師やご家族と検討すること。実際に手技を行うというより、全体を観察してアセスメントし、ご本人の状態にあった適切なケアをご家族が出来るように支援するのか看護師の役割だと感じています。これは経管栄養に限らずですが…。

 胃ろうを造ることを希望しても、検査をしてみると胃や腸の位置関係によって造れないこともあり長期に鼻からチューブを入れて栄養をとっている方もいらっしゃいます。

 胃ろうに対して世間からどちらかといえば批判的な風潮を感じて、胃ろう増設を希望するのに躊躇している方もいました。病院での医療者の態度に、胃ろう造ると希望するのがつらかったと涙されていました。あんなに考えて考えて決めたのに、と。

 

 胃ろうがよい、わるい、という議論は私はしません。なぜなら、その人の体の状態、考え方、生活や家族環境、様々な要素が一人一人異なるからです。その方にとって、どのように生命に向き合い、食事にむきあい、生活に向き合うのがよいのか。それを家族と多職種と一緒に考えるしか答えはないなあ、と思っています。

東京オリンピックとイケメン選手

世間がラグビーワールドカップで盛り上がっている間、ラグビーに乗り遅れた私は同時期に開催されていたワールドカップバレー男子を観ていました!強かったですね、バレーも!

 

 訪問看護で関わっていた利用者さんで、介護度としては要支援でしたが長期間の呼吸器疾患を持ち、病状としては薬剤での調整などは難しい病状のAさん。痩せていて動くと苦しくなる時もあり、在宅酸素も導入されていたのですが、ご本人は酸素を付けて歩くなんて絶対いやよ、といって看護師やリハビリスタッフと一緒に歩行訓練いく時にしか使用せず・・・。ご家族と二世帯同居ではあっても、日中はご家族もお仕事に忙しく昼間は独居のようなもの。お話を聞くと、以前はかなり社交的で多趣味でお出かけされていたようでしたが、私が関わった時には、ほとんど家で過ごされ週末にご家族と買い物に行く程度でした。

 もともとお出かけが好きだったAさんからは、何も楽しくない、子供たちもあまりかまってくれない、とネガティブ発言が続いていました。

 そのAさんが、東京オリンピックが決まった時に唯一といっていいほどの前向き発言が!「東京オリンピックは見たいわよね。」「何を観たいですか?」

「男子バレーよね!石川君、かわいいもんね~」

そうそう、Aさんはスポーツも好きですが何よりイケメン好きで、お相撲さんも野球選手もフィギアスケートも、そこにイケメンがいれば楽しそうに話していました。

それを聞いて以来、私も石川君は注目してみるようになりました。 笑

 とても残念なことに、Aさんは徐々に呼吸苦が増強してきて全身状態が不安定になりました。呼吸器感染症で入院していましたが、落ち着いていたようだったのですが急変され、今回のワールドカップバレーも見ることがかないませんでした。

 東京オリンピック、たくさんの人たちが前向きに生きる目標になっているなあ、と思っています。

 

 大学院生活が思っていたよりも大変で、なかなか更新できませんでしたが少しずつでも更新していきたいと思います。

看護系大学院受験の鍵は英語

大学院の受験は学校によって違うのはもちろんですが、おそらくどこの大学でもキーになるのは、英語かなと思います。


大学院の説明会でも英語を勉強するように言われました。

英語って必要⁈とか思っていたら、教授に

アジア諸国では日本の在宅医療システムを参考にしようとする国もある、その時に自分たちが行っていることを伝えられる言葉がないと困ります。」

これには納得。

あと、CNSになった友人に言われたのは、

「英語文献が読めないとダメだよ。」

こちらも納得。


私は一度看護師をやめて、というか一度疲れて離れたくなって、ワーキングホリデー制度を利用して海外生活を送っていたこともあり、英語への拒否感なく取り組むことができました。まさか自分が大学院受験をするなんて、あの時の英語力が役立つ時が来るなんて。経験に無駄なことはないし、どこで繋がるかわからないんだなあってしみじみ思います。


受験した大学院は英語長文を読んで日本語で答える試験だったので、受験を決めてからは毎日30分、英語論文を読む練習をしました。辞書片手に30分英語を読むという時間と身体の感覚に慣れるために。

気になる分野の日本語論文の参考文献に載っている英語論文だったり、雑誌で取り上げられている英語論文を取り寄せて読んでいました。


看護師も英語力が必要ですね。

何よりも、英語ができると海外旅行も気楽に行けるし、話せる人も広がるし、言語を習得すると仕事でも私生活でも世界が広がると思います。

在宅看護CNSコース 大学院受験

久しぶりの更新です。

この夏、色々と思い立って在宅看護CNSコースのある大学院受験をしていました。

朝が苦手でいつもギリギリ出勤なのですが、受験を決めて英語が必須となってから
毎朝出勤前に30分、英語の勉強です。

また受験書類である研究計画書の作成のため県内の医学系大学の図書館やインターネットで文献検索。

忙しかったけど、新鮮で面白かった。

在宅分野に転職したときから思っていた、
「どうしてギリギリでしか在宅に帰ってこれないのだろうか?」
それを再度痛感する利用者さんとの関わりが、私に受験を決意させてくれました。

在宅と地域の連携は重要といわれているけれど、きっと病院側も、もちろん在宅側からも色々と言いたいことがあるはず。
私にはたくさんあります。
でも、文句を言うのではなく、在宅側と病院側の看護師同士が早期から連携して一つのチームとして患者さんを支えることができれば・・・。

チーム医療が施設を超えて行われるようなことが必要なんだと思っています。
理想ばかりだけど、理想がなければ現実を理想に近づけることはできない、と
なんとかモチベーションを保ちながら頑張ります。

奇跡的に合格したので、来年から二足のわらじ生活です
どうなることやら・・・。

 

2年間の積み重ねが、最期の時間に繋がる~認知症でがん末期のKさんとの関わり 2~

二つの季節を過ぎた頃から、また体重が減ってきました。横になっていることが増えてきます。お風呂も訪問看護で手伝うことになったり、動いた時に腰痛が出て痛み止めを使ったり、2階に上がるのが大変になり介護ベッドを入れるようになったり


2年近くの関わりで、病気はないけれど看護師の私が訪問することをKさんは受け入れてくれ、顔と名前を覚えてくれていました。なのでいざ看護介入が必要になった時、入浴や排泄のケアをすることへの拒否はありませんでした。


奥様は普段の延長だからと、少しづつ出来なくなってきた食事や排泄のことについては、自然に介護をされていました。


食事や排泄の手伝いは医療者から見たら介護ですが、ご家族からしたら、困ってることをちょっと手伝ってあげる、という自然な流れなんだな、と奥様に教えてもらいました。


Kさんは、ほとんどの時間ベッドで寝ている状態になっても私の顔を見ると、すこぶる調子はいいですよ、と言っていました。

いちご一口しか食べられなくなっても、お腹いっぱいだからもういい。


何というか、発言がポジティブなんですよね。痛みも少なく、骨転移によく見られる動いた時の痛みなので、姿勢が落ちつけば痛みは落ちつき、すると痛みがあったことは忘れてしまいます。

今を生きているKさんは、先のことを不安に思うことなく過ごせます。

そのKさんと関わる奥様も、先への不安はあっても、今に目を向けて関わることができます。


語弊があるかもしれませんし、それぞれに症状が違うので一概には言えませんが、認知症の方の神秘的なところだな、と思うのです。


Kさん、奥様と娘さんに見守らる中、ご自宅で静かに息を引き取られました。ご家族と看護師で、お身体を綺麗にし、一張羅に着替えました。

その先は、ご家族が事前に決めていた葬儀社さんにお願いしました。


その後、スタッフ間で利用者さんの振り返り (デスカンファレンス)をしました。

最後は他スタッフも訪問に入ってくれましたが、ほとんど私しか関わっていない時間が長かったのですが、穏やかな最期だったので、あまり大変だったという気持ちはありませんでした。


カンファレンスでは、

2年の間に認知症のケアが出来ていたんじゃない?

・ご家族は話しを聞いてもらって安心してると言っていたよ、

・そら自身がKさん夫婦を尊敬していたよね、とみんなが言ってくれました。


あの2年には、そういう意味があったんだ。安心した気持ちになって涙が出ました。


色んな人生の教えと、訪問看護師としての気付きを与えてくれたKさん家族に感謝です。


一人一人と長く付き合える、訪問看護の魅力ですね。


2年間の積み重ねが、最期の時間に繋がる~認知症でがん末期のKさんとの関わり 1 ~

 訪問すると、シャキッとした立ち姿で迎えてくれたKさん。淀みない会話で、一見すると認知症には見えません。

 

 

Kさんは前立腺癌で骨への転移もあり、内服と注射でホルモン療法をしていました。大きな病院に通っていましたが、急激に体重減少があり終末期の過ごし方を考えるように言われたご家族は、在宅療養を選びました。終末期というには少し早い感じでしたが、認知症のため通院も難しいこともあり、訪問診療と訪問看護が開始になりました。

 

Kさん自身は、自分が前立腺癌であることを認識していません。痛みもないため、医師から説明を聞いても笑って話しを終わりにしちゃいます。自分は健康なのに何で先生や看護師さんが来るのかわからないなぁ、と1年くらい訪問の度に言っていました。

Kさんとはそれから2年のお付き合いになりました。

 

Kさんはしっかり者の奥様と二人暮らし。はじめの1年は月に12回、状態を見るために訪問していました。痛みもなく、認知症ではありましたが自宅内での生活はできていましたし、もともと散歩をしない方だったので迷子になるようなこともなく、何とも平和な訪問でした。

 

何をしていたか⁇

本人と奥様と、話しをしていました。

お二人の出会い、二人の趣味である旅行やゴルフの話し、子育てに対する考え、夫婦円満の秘訣

奥様がKさんを信頼していること、認知症になってもKさんの芯は変わっていない、と奥様が考えていることが伝わってきました。

 

もちろん薬剤や皮膚トラブルの相談にも乗りましたが、ほとんどはお話して終わりでした。時にはケアマネさんも一緒の時間に来てお話をすることもありました。

 

奥様は、普段のKさんを知っていてほしいし、何かあった時に医療体制があるというだけで安心なんです、と言ってくださり訪問を続けていました。

 

1年が経ったころ、少しずつ体重減少が見られました。本人の話しは変わらないけど体重減少や腰痛が見られ、前立腺癌の腫瘍マーカーが上昇したこともあり医師と相談し、奥様と娘さんに病状説明と今出来る治療として、内服薬を追加すること、効果がなければ予後は3カ月くらいの可能性もあるとお話がありました。

 

ご家族は自宅で過ごしつつ、緩和ケア病棟を受診するなど準備をしていました。

 

また、今まで家族行事はみんなで外食をしていましたが、これからはみんなに来てもらうことにした、とお子さん達やご兄弟が自宅に来て記念日を過ごすようになりました。

 

Kさんの家は、なんとなく良い空気が流れているように感じていました。

 

Kさん、お薬が効いて腫瘍マーカーも一時的に下がり、体重も戻ってきました。それからも奥様は自宅に家族を呼び、みんなで過ごす時間を大事にされていました。いつかは具合が悪くなることを実感したのだと思います。

 

 

 

 

訪問看護での看護技術〜オピオイド、症状コントロール編〜

がんの終末期の利用者さんと関わる時に、必要になるのが
症状コントロールのアセスメントです。

がんの痛みや息苦しさに対してオピオイド、医療用麻薬と言われる痛み止めを使いながら日常生活を送る利用者さんは多いです。でも全員ではありません。痛みがない患者さんもいますし、オピオイドを使用することなくNSAIDSやアセトアミノフェンの痛み止めだけでコントロールできる方もいます。
適切に、適量を、効果的なタイミングで使用し、利用者さんの希望する生活を送ることができているか。
観察し、アセスメントして報告する、その報告を参考にして医師が痛み止めの量や種類を検討してくれます。流れは病院と同じです。

在宅で病院と違うなと思うところは、訪問看護と次の訪問看護の間を家族が看ているということ。病院では、自分の勤務が終わっても医療者のケアが続きます、副作用や使い方をアセスメントしてくれます。
在宅では、患者さんとご家族が上手に使えるように、かつ注意すべき副作用に気付けるように具体的にアドバイスをしていくようにしています。
病院では痛い時にナースコールがあって、薬を渡して…となりますが、在宅では必ずしも、訪問した時に痛みがあるわけではないので、痛みの出た状況や痛み止めの効果はどうだったか、生活のリズムが変わっていないかという視点で聞いていきます。
状況を把握しやすいように、内服時間を書いてもらったり、その都度の記載が負担になってしまう時は訪問毎に残数をチェックして服用状況を把握するようにしています。

夜しっかり眠れるように、というのは基本ですが、家族が集まる時間に調子がよいように、朝、お子さんを送り出す時間に合わせたい、など・・・。

日常生活を見ている看護師だから見える部分があるはず。
落ち着いている時から訪問して、その方の大事にしていることや、時間の過ごし方を知っているから提案出来ることがあるはず・・・、そう思って関わりたいと思っています。
日々、精進ですね。