訪問看護って奥が深い!

30代、ナース。独身で仕事にプライベートに好きなことばかりやっています。4年前から立ち上げに関わった訪問看護ステーションで働いています。訪問看護の素晴らしく奥が深い日常をお伝えします。

診療報酬・介護報酬改定〜緊急対応加算と人材不足〜

4月から診療報酬・介護報酬の改定となり、訪問看護も料金が変わったり、新たな加算が付いたりと変更点がいくつかあります。

一スタッフである私でも利用者さんに説明することがあり、病院の時よりも身近で大きな変化だったりします。

24時間緊急対応について、今までは24時間電話にて看護に関する相談を行うという24時間連絡体制加算があったのですが、それがなくなり、いつでも必要に応じて訪問に出ることができる体制をとっている24時間緊急対応加算のみとなりました。
また、介護保険医療保険ともに24時間緊急対応加算の点数があがりました。

電話だけでは在宅療養を継続するような支援は難しく、24時間対応できる訪問看護が重要という国の評価なのだと私は思いました。
何かあったら来てくれるから家で看ていけるというご家族はとても多いです。
また、自宅での看取りであればいつでも訪問できなければ、最期の対応は難しいですよね。

そのためには、もっともっと訪問看護師の数が必要なのではないかな、と心から思います。
私のいる事業所では5人で緊急電話を回していますが、初めは3人で回していました。人数が一人、また一人と増える度に、気持ちがとても楽になりました。

利用者さんにとって必要なサービス、感謝してもらえるサービスということはよくよく理解しているつもりですが、やっぱり具合の悪い方が何人かいらっしゃる時の緊急訪問が重なると、緊張感が続きます。そういう日数はやっぱり少ないほうが、結果的に長く無理なく働けるような気がしています。

2016年末の厚労省の資料によると、訪問看護ステーションで働いている看護師は、従事している全看護師の3.7% のしかいないそうです。2014年末からは少し上昇と・・・。
こんな状況で在宅、在宅の方針だけ進んでも受け皿が整いません。

在宅医療を支えるには人が足りないよ〜、という心からの叫びです。

 

人生100年時代の先輩

今は人生100年の時代、どう生きていくか?テレビでも聞くようになりました。
100年の人生、想像つきますか?
私が担当させて頂いている利用者さんに、まさに人生100年を生きている女性がいます。

本当に強く、優しい素敵なおばあちゃま。
100歳でも自分のことは一人ですることができるくらい体は動かせます。
高齢なので、少しの体調変化から急に具合が悪くなる可能性が高いので、ご家族が落ち着いている時から体調を見ていてほしいということで訪問看護が利用開始になりました。

生き甲斐である庭の手入れも自分の体調と付き合いながら続けています。
訪問すると自家菜園のキュウリを収穫していたりして、その姿を見た私の方がびっくりするくらいです。Tさんが届かないキュウリを一緒に収穫した訪問もありました。

それなりに病気はお持ちです。心臓や腎臓も100年使われると疲れてきます。いわゆる心不全、腎不全と言えるような採血の値です。動くと疲れる、息が上がるという症状がでます。
足も神経痛があり、時々は立ち上がれないほど痛みが出ることがあります。

それでも、Tさんは疲れるから、痛いからと言って動かないのではなく、体調のよい朝に体操をし、天候のよい午後の時間を選んでカートを押しながら散歩にいきます。疲れるからこまめに休憩をとりながら歩くのです。痛みがでないように温めます、痛みが和らぐからと毎朝まるでヨガのようなストレッチを欠かしません。

太平洋戦争は当然、関東大震災も経験されています。
お話を聞く中で、二・二六事件の話が出て驚きました。歴史の教科書で学んだことを体感してきたTさんの激動の人生、若くに結婚し、お店を開き、一代で大きな料理屋さんにまで育ててきたTさん。
誰よりも忙しいはずなのに、女将さんとして働いているときから毎朝散歩をし、大好きな草花の世話をしてお店の庭をつくってきたといいます。

そのTさんが「人生100年っていうけれど、100年生きるのは大変なのよ。痛いところも出てくるし。でも付き合っていくしかないんだから、自分でいいと思ったことをするしかないわよね」
説得力ありすぎです。日々の努力なしに、動ける100歳はない、と思います。

100年分のドラマと人生の教訓を聞かせてもらえる機会を持てていることに感謝です。

 

訪問看護での医療処置 ※尿道カテーテル編

尿道カテーテルというのは、自然に排尿するのが難しい病気の人に、尿道からカテーテルを入れ、カテーテルの先から尿を貯める袋と繋いで膀胱から身体の外に尿が流れるようにする管です。

尿道カテーテルを挿入している方では泌尿器系の疾患の方や、尿をしっかり出し切れないことで感染を繰り返している方などがいらっしゃいます。
尿を外に出す管には、腎臓や膀胱に管を入れて外に出している方もいらっしゃいますが、看護師が交換できるのは、尿道カテーテルです。
女性の方の尿道カテーテルは看護師が交換しています。訪問診療の先生が物品を置いていかれるので、月に1回、訪問看護の時に交換します。

詰まりやすい方の時には、カテーテルの太さや素材などを先生に相談することもあります。今はカテーテルの素材にも色々あるのです。
尿道カテーテルが詰まると、膀胱に尿が溜まってしまうので、ご本人は尿意を訴えたり、尿漏れがあったり、下腹部痛があったりとご家族では対応しきれないので、緊急電話に連絡がきます。尿道カテーテル関連の緊急訪問は、それなりにあるかなぁ…

でも、仕方ないですよね。看護師か医師しか尿道留置カテーテルの交換はできないのですから。緊急訪問の体制がなければ、患者さんは夜でも病院に行くしかないのです。

なので、カテーテルが入っている方やご家族には、尿量が急に減っていないかを日中の間に確認することや、カテーテルのミルキングの方法を指導したり、水分をしっかり摂取するようにと出来るだけ予防したり、早期に気がつけるように普段の訪問時からご家族や本人に関わっていきます。

あと在宅にきて知ったのは、尿を溜める袋も病院で使う大きなものだけでなく、レッグバックという足に括り付けて使う小さいタイプのものがあり、ズボンを上から履くとカテーテルが入っていて袋がついているなんて全然わかりません。
あと、尿道カテーテルの先端に袋ではなく、DIBキャップといって蓋をつけ尿が溜まったら定期的に蓋をあけ尿を出すことが出来るもの。これはさらに外からは全然わからないし、袋がないので身軽です。ただ、蓋の開け閉めが細かい作業になるので、ご高齢の方には少し難しいこともあります。泌尿器科では当たり前の物品なのかも…。

担当している利用者さんで、病気の進行にともない尿道カテーテルを挿入することになり、カテーテル挿入後1ヶ月くらいした頃に状態観察と入浴介助の目的で訪問看護が開始になりました。デイサービスに行くのがとても楽しみだったのですが尿を溜める大きな袋があることで周りの人に特別な目で見られていると気持ちが落ち込んでいました。先生からレッグバックをもらっていたけれど、使い方がよくわからなかったようでした。毎日レッグバックに付け替えていいのですが、高齢の奥様では付け替えが少し不安があるようだったので、まずはデイサービスの時だけでも息子さんに手伝ってもらいレッグバックに付け替えて行くことにしました。周りの人から「管はなくなっちゃったのかい?」と言われたと笑顔で話してくれました。

自宅で暮らす方たちは家にこもっているわけではないので、見た目や身軽さっていくつになっても大事だなぁと思います。

訪問薬剤師さんの力

在宅医療を担う職種には、看護師、リハビリ職、医師、重要ポジションのケアマネさん、他にもヘルパーさん、通所サービスのスタッフ、など沢山います。
あと、最近は頼りになると感じる仲間に薬剤師さんがいます。

訪問薬剤を利用すると、薬剤師さんが処方された薬を自宅に持ってきてくれ、薬剤の作用、副作用の説明、と副作用症状の観察、内服薬管理(お薬カレンダーへのセットなど、その方法も看護師と相談して個別性のある方法に!)。あとは、同じ作用の薬剤でも、利用者さんにあった内服経路や内服回数のものへ、医師に薬剤の変更を提案してくれることもあります。

今は、高齢者の二人暮らし、認知症の夫婦二人暮らしの方は本当に多いのです。自分の両親だって、75歳を超えたら高齢者二人暮らしの老々世帯です、今の時代、特に都会では普通のことなのかもしれない。

私には、よく連携しており、頼りにしている薬剤師さんが二人います。今では、薬剤のことについて電話で気軽に聞ける関係になりました。

投薬治療がきちんとできることで、症状が落ち着いてきます。

色々な職種のかたと連携が欠かせない在宅医療。
実は同じ建物にいたはずの病院で勤務しているときよりも、身近に感じる今日この頃です。

在宅医療の看護技術 ※呼吸ケアのスキル

訪問看護では、病院のように検査結果や画像情報を見れるわけではないので、フィジカルアセスメントがとっても大事と痛感します。
訪問看護で働くようになって、欠かせない知識だなと実感することの一つに、呼吸ケア、呼吸に関するフィジカルアセスメントとそのケアです。

私、恥ずかしながら全然足りてませんでした。今でも、自信があるかと聞かれたら戸惑ってしまう。。。


呼吸音の聴取、肺複雑音の聴取、アセスメント
呼吸リハビリテーション・呼吸筋マッサージ
排痰ケア・スクイージング

ぜーんぶ大事。
呼吸器疾患の人ではなくても、心疾患の人、肺炎のリスクがある人、がんの終末期の呼吸苦がある人、ほぼ全員に呼吸ケアが必要になると思っています。

肺炎になった利用者さんに、抗生剤投与と排痰ケアで短期間だけ1日2回訪問することもあります。


排痰ケアや呼吸音のアセスメントはもちろん、
呼吸筋マッサージの方法を知っていれば、息が苦しいと言っているかたに少しでも楽と思ってもらえるかもしれません。ご家族の話を聞きながら、ベッドに横になっている利用者さんの脊柱起立筋をマッサージする、その理由とご家族でもできる方法を伝える。

知識があれば、提供できるケアの幅が広がります。
それでもし、利用者さんが気持よいとおっしゃって下さればご家族も喜ぶし、自分の自信にもなります。

今の時点で自信がなくても、たーくさんの研修が行われています。
私も何度も何度も研修に参加しました。
今年は、1年を通して月1回開催される呼吸ケアの研修に参加させてもらっています。

いっぺんに出来るようにはならないけれど、少しずつでも前進できるように。
自分のモチベーションには波があるけれど、少しずつでも頼りになる看護師になれるように、私も頑張ります。

生と死を語ることについてー2ー

看護師になった時から、がんの患者さんに関わることが多かった。
診断から数ヶ月後に亡くなる姿をみて、一度は無力感に襲われて臨床を離れることもありました。

でも、生活するために臨床に戻り、緩和ケア病棟で働き、今は在宅で最期まで看る機会も多く持っています。

今は前ほどの無力感に襲われることはありません。もちろん、経験を重ねることで患者さんに提供できるケアが増えていることもありますが、一つ大事なことに気がついたから。

どんな人でも、生きてきて、死んでいくことだけは平等だ、と思ったこと。

お金持ちだったり、貧乏だったり、家族が沢山いたり、独りぼっちだったり、社会的地位が高かったり、低かったりと色んな格差を目の当たりにしますが、いつか命が尽きることだけは平等。


そう思った時から、目の前の人に対して、看護師として今出来ることをしよう、と改めて思いました。みんな平等だから、わたしもこの仕事を頑張れると思った。
なんでだろうね。

生と死を語ることについてー1ー

ここ1週間で、私がほぼ毎日チェックしているサイトの『ほぼ日』と『Chikirinの日記』で「死」がキーワードに出ていました。
徒然なるままに、生と死について、わたしが普段から感じていることを書くことにします。

私達医療者は、日常的に生と死に接しています。
でも、そうでない人達にとって、死について話すことはタブーな話題になっている。
病気の人のことを話すことさえ、話しにくいこともある。

看護師同士の会話では、自分が関わった患者さんの話をすることがあります。
でも、同じように病気の人の話を医療者以外の人と話すのは大変気をつかっています。
病気の人、というだけで可哀想と思われがちだから。
でも、私達は病気のことではなく、その人の人としての振る舞いや生き方の話をしているだけなのです。

私が患者さんとの関わりを話せる医療者ではない友人に言われて嬉しかった言葉。
『そらの話は、よく聞くと悲しい状況かもしれないけれど、明るい』
そうなんです!

どんなに大病を患っていても、どんなに辛い状況でも、どんなに死が間近な人でも、健康な私達と同じように、一日を大事に、楽しく、辛くなく過ごしていることに変わりはないのです。涙もあれば、笑いだって沢山、沢山あるのです。