2年間の積み重ねが、最期の時間に繋がる~認知症でがん末期のKさんとの関わり 2~
二つの季節を過ぎた頃から、また体重が減ってきました。横になっていることが増えてきます。お風呂も訪問看護で手伝うことになったり、動いた時に腰痛が出て痛み止めを使ったり、2階に上がるのが大変になり介護ベッドを入れるようになったり…。
2年近くの関わりで、病気はないけれど看護師の私が訪問することをKさんは受け入れてくれ、顔と名前を覚えてくれていました。なのでいざ看護介入が必要になった時、入浴や排泄のケアをすることへの拒否はありませんでした。
奥様は普段の延長だからと、少しづつ出来なくなってきた食事や排泄のことについては、自然に介護をされていました。
食事や排泄の手伝いは医療者から見たら介護ですが、ご家族からしたら、困ってることをちょっと手伝ってあげる、という自然な流れなんだな、と奥様に教えてもらいました。
Kさんは、ほとんどの時間ベッドで寝ている状態になっても私の顔を見ると、すこぶる調子はいいですよ、と言っていました。
いちご一口しか食べられなくなっても、お腹いっぱいだからもういい。
何というか、発言がポジティブなんですよね。痛みも少なく、骨転移によく見られる動いた時の痛みなので、姿勢が落ちつけば痛みは落ちつき、すると痛みがあったことは忘れてしまいます。
今を生きているKさんは、先のことを不安に思うことなく過ごせます。
そのKさんと関わる奥様も、先への不安はあっても、今に目を向けて関わることができます。
語弊があるかもしれませんし、それぞれに症状が違うので一概には言えませんが、認知症の方の神秘的なところだな、と思うのです。
Kさん、奥様と娘さんに見守らる中、ご自宅で静かに息を引き取られました。ご家族と看護師で、お身体を綺麗にし、一張羅に着替えました。
その先は、ご家族が事前に決めていた葬儀社さんにお願いしました。
その後、スタッフ間で利用者さんの振り返り (デスカンファレンス)をしました。
最後は他スタッフも訪問に入ってくれましたが、ほとんど私しか関わっていない時間が長かったのですが、穏やかな最期だったので、あまり大変だったという気持ちはありませんでした。
カンファレンスでは、
・2年の間に認知症のケアが出来ていたんじゃない?
・ご家族は話しを聞いてもらって安心してると言っていたよ、
・そら自身がKさん夫婦を尊敬していたよね、とみんなが言ってくれました。
あの2年には、そういう意味があったんだ。安心した気持ちになって涙が出ました。
色んな人生の教えと、訪問看護師としての気付きを与えてくれたKさん家族に感謝です。
一人一人と長く付き合える、訪問看護の魅力ですね。