訪問看護って奥が深い!

30代、ナース。独身で仕事にプライベートに好きなことばかりやっています。4年前から立ち上げに関わった訪問看護ステーションで働いています。訪問看護の素晴らしく奥が深い日常をお伝えします。

自宅で過ごすを本人と家族が選ぶ時 〜Yさんとの関わり 1/3〜

訪問看護師1年目の時、70代前半の膀胱癌のYさんを担当しました。
定年すぎても保健師として働いていたYさん、手術、放射線療法、化学療法と治療を受けてきたけれど、効果がみられなくなり病院の連携室経由でクリニックに相談がありました。できるだけ最期まで自宅で過ごしたいからと、訪問診療をしているクリニックを探されていました。
まずは月1回、外来通院で痛みや腎瘻とウロストミーの管理をしてもらうことになり、通院の合間の期間の状態観察目的で医療保険訪問看護の利用開始となりました。

通院できるくらいなので、自宅での普段の生活は送れています。腎瘻とウロストミー管理の相談、オピオイド(医療用麻薬の痛み止め)の効果と副作用の評価、薬の使い方のアドバイスに加え、手術の合併症で両下肢リンパ浮腫があったので、リンパマッサージでまずは2週間に1度に訪問することになりました。勤務しているステーションにはリンパ浮腫療法士がおり、指導をうけて実施しました。

リンパマッサージをしながら今までの病気の経過、保健師の仕事の面白さ、家族のこと、ご主人との出会いなど色々な話を聞かせて頂きました。看護師として一緒に働いてみたかったなと思える方でした。保健師として訪問の仕事もしていたとのことで、私も少しずつ訪問看護の面白さに気付いた頃だったので話が盛り上がったこともありました。

ご主人は技術職さんらしく、少しコワモテな感じ。テニスが趣味で訪問看護の時もテニスに行っていたり、帰ってくるところだったり。
お家にいくので、少しずつご主人と話をすることも多くなり、Yさんのリンパ浮腫が増強してきたときには、ご主人もリンパマッサージを指導し、行ってもらうこともありました。

お話しを聞いている間に、自宅で過ごしたいとは思っているがご主人はどう思ってるのか本当のところはわからないと考えていることがわかりました。また、ご主人への負担についてもとても心配されていました。在宅療養での体制として介護保険についてや訪問診療、看護でどんなことができるかお話しし、またすでに受診されていた緩和ケア病棟について医療体制や自宅との違いについて情報提供しました。

今までご本人が情報を得て、納得して選んできた方だったので、最後までご本人が自分のことについて選ぶことができるように支援したいなと思っていました。

 

訪問看護での医療処置 ※点滴・注射編

訪問看護での医療処置、実際はどうやっているのか、意外とイメージが湧きにくい気がします。

わかりやすい医療処置として、点滴、注射があります。
点滴、注射については、医師からの指示のもと実施しています。病院と同じです。
でも病院よりも頻度は少ないです。病院では毎日のように扱っていた点滴ですが、在宅では利用者さんの状況によって実施頻度はかわります。
私がいるステーションは、外来・訪問診療をしているクリニックの医療法人が母体であることもあり、医療行為が比較的多いので1〜2週間に一度は自分の訪問時に点滴をする機会があるくらいかと思います。時にはほぼ毎日、点滴、注射を行う状況の場合もあります。この頻度については、地域の医療体制や利用者さん、主治医の方針などによってかなり変わると思います。

点滴、注射をする場面として一番多いのは、肺炎などの感染症で入院をするほどでもないが内服薬を飲むのは難しいという状況のとき。
医師から点滴指示書が出て、抗生剤や補液をするために訪問します。物品はクリニックや訪問診療の医療機関から出されるので、すでに利用者さんの自宅に置いてあるか、クリニックに取りに行きます。

病院と違うのは、一人で訪問するということ。状況的には静脈確保を失敗できない・・・
でも、やっぱり失敗することもあります。その時は、時間をあけて他のスタッフに訪問をお願いすることもあったり・・・。

在宅ならではなのは、静脈注射が難しいときに皮下注射で対応できるような指示をもらっておくことが多いということ。皮下注射できる薬剤がはじめから選択されていたり、静脈ルートが確保できればビタミン剤など混注するが、皮下であれば混注しない、など。
看護師も先生も、利用者さんが入院しなくても自宅で治療できる方法を、一生懸命考えているのです。

話を聞くことがケア

私は、人の話を聞くのが好きです。

患者さんの話を聞くことがケアになる、と気付かせてくれた患者さんがいました。
がん専門病院で働いていた時、50代の膵癌の男性患者Aさんを担当していました。
2年目か3年目だった私に、若く積極的に治療など情報収集をされ、病棟に私の指名で下剤の使用方法について相談の電話をかけてくれるAさん。頼りにしてくれているとは感じながらも、少しプレッシャーでもありました。

治療のため何度か入院を繰り返されましたが、効果が乏しくなり治療中止となってしまった入院の時。

準夜勤で最後のラウンドをしていたら、Aさんはまだ起きていました。
何がきっかけで話すことになったのか覚えていないのですが、私はAさんのベッドサイドにしゃがみこんでAさんの仕事の話、奥様との出会いの話を20分位聞いていました。
海外の百貨店で働いていたこと、奥様とは飛行機で出会ったこと。
そろそろ申し送りのために記録を書かないといけないと、退室しようとしたときに
「こういう話ができて嬉しいです。また話をさせてくださいね。」
とAさんは言いました。

先輩に、ラウンドに時間かかっていたけど何かあった?と言われましたが、何かあったわけでもなく話を聞いて遅くなったとは結構言いにくかったんですよね。
病棟に勤務しているナースだったらわかってもらえると思うのですが、準夜勤の夜中のラウンドで患者さんの話を数十分聞くってあまりない…ですよね。
優しい先輩だったので怒られたりはしないのはわかっていても、
ナースコールがなったら後輩である自分が出ないといけないのに、席を外してしまったという気持ちがあったのだと思います。

その後、Aさんは急激に状態が悪化していきました。胸水が溜まり、ドレナージや胸膜癒着術をしても追いつかないくらい。そして、話の続きを聞かないまま病院で最期を迎えました。

なぜ、もっと早いうちからAさんの病気や症状のことだけでなく、彼の人生について話を聞く時間を取らなかったんだろう、なぜ、あの夜勤の続きの話を何よりも優先して時間を取らなかったんだろう。後悔ばかりです。

Aさんのように大事なことに気付かせてくれた患者さんが沢山います。
今は、訪問看護で利用者さんとご家族の人生の歴史を聞かせていただいています。
ライフレビューを意識したコミュニケーション。それはケアの一つでもあるのですが、単純に私は、間近でドラマを見ているようで楽しいのです。

一番心配だった緊急電話当番について

働く前に一番心配だったのは、緊急電話対応のこと。

一人で電話を受けて緊急時に対応するなんて考えただけで怖い、

とか、

そもそも寝ている時に電話に気づくのかな私…って心配まで。

 

個人的な感想としては、やっぱり大変です。ある程度予測されたことで連絡があるのなら良いのですが、意外な利用者さんから電話がかかってくると出る前からドキドキします。

実際に訪問しないと様子がわからないことも多いし、でも夜中に訪問にでるのには気持ち的になかなか辛いものがあります。

 

でも、このサービスがないと利用者さんが家で最期まで過ごすことはできないよなあ、って思うから何とか続けることが出来ています。

 

はじめは一つ一つの自分の対応や判断に自信がなくて、上司や先輩に何度も電話して相談していました。気軽に相談できる関係性や、慣れない緊急対応の負担を気にかけてくれ呆れずに相談にのってくれる職場の風土がすごくありがたかった!

あと、少しずつ電話当番をしてくれるスタッフの人数が増えるとそれだけ担当する日数が少なくなるので楽になりました。また、夜間に緊急訪問したときは翌日の訪問をみなで調整して早退できるようにする、という体制があり、そういう配慮に気持ちが救われたりもします。

 

研修などで他のステーション勤務の人に聞くと、緊急当番については誰がもつか、どのようなサポート体制か、などは事業所によってかなり違うようでした。

 

前よりは携帯を持っていても普通に生活できるようになったけれど、やっぱりこの緊張感は好きにはなれません。

 

でも、特に夜に緊急で訪問したときに利用者さんから一番感謝されます。

誰かがするしかないんですよね。。。

 

 

嬉しい一言

今年の年越し、私は緊急電話当番をしていました。
お正月とか誕生日とか、少し特別な日に当番をすると思い出すことがあります。

2年前?3年前?かな。
別にいいんだもん、と思って自分の誕生日に緊急電話当番をしていました。
予測される予後は数日という経過をたどっていたIさん、
THE 肝っ玉母ちゃんという奥様と2人暮らし、奥様が介護されていました。

一週間前には一度意識レベルが低下して夜に娘さんにも来てもらい今日超えるの難しいかも、という説明をして退室したところ、翌朝「起きました!」と。
えっ!血圧60代で声かけしても反応なかったのは幻だった…?
娘さん曰く、お母さんが「まだ逝っちゃダメよ!!戻ってきなさい!!」
と呼び戻したそう。さすが!
その後一週間、状態としては低めだが痛みは貼付剤や舌下投与のお薬を使用し、ベッド上ながらご家族と時々話ができるかな、という状況で過ごされていました。

自分の誕生日に携帯当番をしていた一週間後の夕方に、奥様から電話。
お父さんの反応がおかしい、と。
訪問にすると血圧と意識レベルの低下が見られました。再度娘さんに連絡し、娘さんご家族に来てもらい今の状態を説明。奇跡的に復活したお父さんだからわからないけれど、一般的な経過としては今日を超えるのは難しい状況と思われることをお伝えし退室しました。

暗くなったころに呼吸が止まったと連絡があり、先生の診断後、お身体を綺麗にするために私と担当看護師Nさんとで訪問にいきました。肝っ玉母ちゃんと娘さん、お婿さんにお孫ちゃん達と一緒にお父さんの思い出話と一週間前の復活話をしながら、泣き笑いながらの時間でした。

ご自宅を後にする私達に向かって、娘さんが「そらさんと、Nさんにお父さんを看てもらえて嬉しかった!」と大きな声で言ってくれました!

自分の誕生日に忙しい1日で疲れていた私に、とってもとっても心にしみた一言。
「よかった」ではなく「嬉しかった」という言葉が私は嬉しかった。
違いますよね!
娘さんの気持ちを乗せてくれた言葉に、疲れが飛んだ瞬間でした。

 

介護離職について

本日のニュースで介護離職について取り上げている番組がありました。

訪問看護で関わっている利用者さんの中には、60代、70代という自分の親と同世代の利用者さんもいます。多くは奥様、またはご主人という配偶者の方が介護者になることが多いのですが、中には自分と同世代の子ども達が一時的に介護の中心となることもあります。

友人との話題に親の病気の話がでることも増えてきました。年齢を感じます 笑
そういう時に、必ず言うこと。
「介護のために仕事を辞めちゃだめだよ!」
友人の一人は、そらのこの言葉がすごく印象に残ったって言ってくれます。
「だって、自分は残るんだよ。どんなに親のことを大事に思っていても、自分のことも大事にしないと辛くなるから。」

介護が必要になる時って急に介護が必要になる時と、気がついたら介護と言われることをすでにやっていたという時があると思います。

急に介護が始まるというのは、
例えば、がんの治療をしていてその間は自分で自分のことが出来ています。ある時、治療のためか病気の進行などで入院することになることがあります。
そういう時、具合が悪くなっていることが多いので、退院時には介護が必要になることがあります。
脳梗塞などで入院した際も退院時に急に介護が始まります。
つまり、入院前は自分で自分のことを出来ていたが、退院時には介護が必要な病状になっていた時。

気がついたら介護が始まっていたというのは、
認知症や加齢に伴う身体変化がある時です。
介護って、結局は生活です。食事に手伝いが必要になった、トイレのことで困ったことが増えた、一人で出来ていたことを任せるのが難しくなった…
あまりにも日常のことで、介護をしているという認識は特にないというご家族もけっこう多いです。

終わりが見える介護と、見えない介護もあります。
何がいい、悪いということではなく、介護と一言でいってもいろんな状況があります。
そして、介護は始まったら休むことができません。一人で抱えることは出来ないです。
一人で一人を介護するというのは、本当に、本当に大変なこと。
介護者が自分を大事にできること、一緒に考えてくれる人がいること、医療、介護の専門職が適切なサービスを提案、提供していくこと。
介護される人だけでなく、介護者の方が安心し、日々の介護の中に嬉しい瞬間を重ねていけるような支援が在宅療養を続けるキーポイントのような気がしています。

病院では、医療はあっても介護のことをここまで考えることがなかったけれど、
やっぱり在宅医療では介護抜きでは語れません。

訪問看護に興味をもったキッカケ

看護師2年目、私はがん専門病院で勤務していました。
治療が難しくなった患者さんは、緩和ケア病棟がある病院や自宅療養の場を選び、転院や退院していきます。

詳細はあやふや記憶ですが…
50代の女性の患者さんを担当していました。
治療が難しくなりその方は在宅療養を選択され、訪問看護師さんとカンファレンスをし、退院されていきました。
担当していた私はほとんど彼女のために何もできなかったことしか覚えていません。
退院にむけて、注射で投与していた鎮痛剤を貼付剤に変更したり。イレウス管や点滴の管理方法を指導したり。でも看護の役割ってそれだけじゃないよって昔の自分に言ってあげたい。
お子さんきてもベッドサイドに小さく座っていて。静かでとても常識的で若々しい患者さんとご家族という印象でした。

退院後、しばらくしてから訪問看護師さんから退院後とご自宅での最期の様子が書かれたサマリーが病棟に送られてきました。今覚えば、必ず書かなければいけない書類が沢山あるなか、病棟にサマリーを返してくれるなんてありがたいことでした。

彼女はフラダンスが好きで自宅ではベッドの上でフラダンスを踊っていたそう。
とても素敵な笑顔だったと。細かいことは覚えていないのですが、とにかく衝撃でした。
私は、何にもその患者さんのこと知らなかった!でも、フラダンスをベッドの上でしている姿が似合うなあ、お子さんとご本人の笑い声が響く、そういう様子が想像できるなあと。

彼女がどんな風に過ごしたいか、聞いていなかった私の看護師としての知識と技術と想像力の低さが原因なのですが、
病院と自宅では過ごし方が違うんだ!って頭にインプットされました。

それから8年後に、自分も訪問看護をはじめました。
訪問看護をいつかやりたいなあ、と思ったきっかけをくれた訪問看護サマリー
に感謝です。

いつか、自分のように訪問看護に興味をもってもらえるように病院にサマリーで報告しよう、と思ってはいるのですが、まだまだ日々のことに追われてしまう毎日。
今年の目標にしたいと思います。