訪問看護って奥が深い!

30代、ナース。独身で仕事にプライベートに好きなことばかりやっています。4年前から立ち上げに関わった訪問看護ステーションで働いています。訪問看護の素晴らしく奥が深い日常をお伝えします。

生と死を語ることについてー2ー

看護師になった時から、がんの患者さんに関わることが多かった。
診断から数ヶ月後に亡くなる姿をみて、一度は無力感に襲われて臨床を離れることもありました。

でも、生活するために臨床に戻り、緩和ケア病棟で働き、今は在宅で最期まで看る機会も多く持っています。

今は前ほどの無力感に襲われることはありません。もちろん、経験を重ねることで患者さんに提供できるケアが増えていることもありますが、一つ大事なことに気がついたから。

どんな人でも、生きてきて、死んでいくことだけは平等だ、と思ったこと。

お金持ちだったり、貧乏だったり、家族が沢山いたり、独りぼっちだったり、社会的地位が高かったり、低かったりと色んな格差を目の当たりにしますが、いつか命が尽きることだけは平等。


そう思った時から、目の前の人に対して、看護師として今出来ることをしよう、と改めて思いました。みんな平等だから、わたしもこの仕事を頑張れると思った。
なんでだろうね。

生と死を語ることについてー1ー

ここ1週間で、私がほぼ毎日チェックしているサイトの『ほぼ日』と『Chikirinの日記』で「死」がキーワードに出ていました。
徒然なるままに、生と死について、わたしが普段から感じていることを書くことにします。

私達医療者は、日常的に生と死に接しています。
でも、そうでない人達にとって、死について話すことはタブーな話題になっている。
病気の人のことを話すことさえ、話しにくいこともある。

看護師同士の会話では、自分が関わった患者さんの話をすることがあります。
でも、同じように病気の人の話を医療者以外の人と話すのは大変気をつかっています。
病気の人、というだけで可哀想と思われがちだから。
でも、私達は病気のことではなく、その人の人としての振る舞いや生き方の話をしているだけなのです。

私が患者さんとの関わりを話せる医療者ではない友人に言われて嬉しかった言葉。
『そらの話は、よく聞くと悲しい状況かもしれないけれど、明るい』
そうなんです!

どんなに大病を患っていても、どんなに辛い状況でも、どんなに死が間近な人でも、健康な私達と同じように、一日を大事に、楽しく、辛くなく過ごしていることに変わりはないのです。涙もあれば、笑いだって沢山、沢山あるのです。

私がぬか漬けをしているワケ

数ヶ月前からぬか漬け生活をしています。
憧れはあったけれど、自分で一から始めるまでは気持ちが動かなかったのに、
我が家の冷蔵庫にぬか床があるワケ。

利用者さんから頂いたのです。
数十年物のぬか床をわけていただきました、形見分けという感じで。

乳がん、皮膚転移、肺転移のMさん
娘さん二人と同居されていましたが、娘さんそれぞれとMさんの関係は良いのですが、娘さん同士はあまり関係性はよくないようでした。

いつも、私たちスタッフ間や看護師と医師との関係が良いとお褒めをいただいていました。
下肢リンパ浮腫に対して、通院でのマッサージや手術も受けてきたMさん。訪問看護でも
初めのころは下肢のリンパ浮腫に対してマッサージと環境調整で訪問していました。

色白で可愛らしいMさん
料理が大好きで、大きな甕のぬか床でつけたキュウリを時々お土産にくれました。
マッサージの間は、料理のこと、ぬか漬けをいつかやってみたいと思っている話しで盛り上がることが多くありました。いつか、ぬか床分けてあげるね、と言われていました。

少しずつ病状が進行し、呼吸困難やADLの低下が見られてきました。
ウトウトする時間が増えてきて、残りの時間が数日と予測されていたので、出来るだけご家族には側にいてもらうようにお話ししていました。

訪問看護で身体をふき、着替えをし終わったあと。Mさんはやはりウトウトされていました。私が、「また来ますね」と声をかけると、
突然ハッと目をあけて、「ぬかを持って行ってー」と。家族みんなの前で。
思わず、みんなで笑ってしまいました。
その数日後、Mさんは自宅で息を引き取りました。

10日後くらいに、慰問でご自宅に伺いました。
Mさんのことを偲び、ご家族からもぬか床を持って帰って下さいと言っていただきました。

今もちゃんとぬか床あります。
サボりがちの私でも美味しいぬか漬けが出来るのは、Mさんが長く大事に手をかけてきたお陰だなと思います。

これは絶対にカビさせるわけにはいかないと、これからも楽しんでいきたいと思います。

訪問看護での医療処置 ※CVポート編

CVポート。
医療者ならば聞き慣れている言葉ですが、医療者ではない人達にはイメージがわかないかもしれません。
口から栄養を取れない場合に、鎖骨の下にある太い静脈にカテーテルをいれて、そこから高カロリーの点滴を入れます。皮膚の下にポートという土台を埋め込み、カテーテル感染がおきにくいようになっており、表面上は皮膚で覆われています。
自宅では針刺し、点滴の交換、点滴ルートの交換、カフティーポンプ(在宅用の点滴ポンプ)の管理といった処置が必要になります。

私のステーションは癌の利用者さんが多いので、私が訪問看護で関わるかたでCVポートを利用しているのは、比較的若い世代の消化器系や耳鼻咽喉科の癌のかたで口から栄養をとることが難しくなり、CVポートからの高カロリー輸液をしている方が多いです。
抗がん剤治療のためにCVポートを挿入している方もいらっしゃいます。
これは訪問看護ステーションでどのような利用者さんが多いかによって変わると思います。

40〜60代の若い世代の方が多いので、基本的に針刺し以外の処置はご家族ができるように指導していきます。退院時には病院でルート交換とカフティーポンプの管理、生食ロック、抜針方法を教わってきている方がほとんどで、針交換は1回/週、訪問看護で実施することが多いです。少なくとも点滴交換とポンプの扱い方、注意点さえ指導してくれていれば、あとは自宅で指導していくことができるので、一日でも早く退院したい人の場合は病棟の看護師さんと指導内容を確認しあっていきます。

どんなに理解がスムーズなご家族でも、やはり自宅で、自分一人でやるということに初めはとても緊張されています。初めて行うときは訪問看護の時に一緒に手順を確認し、困ったときにはいつでも電話で連絡してよいとお話ししています。カフティーポンプのパンフレットなんかは写真付きでとてもわかりやすく作られており、初めの頃は私も一緒にパンフレットを見ながらやっていました。

ポンプのアラームがなった、ルートに空気が入った、など初めは色々な不安があり電話で相談されることもありますが、ご家族はけっこう逞しくて、電話での口頭説明で対応できることが多いのです。もちろん、訪問が必要な状況の時には臨時訪問で対応します。
処置に慣れてきて、予想外の事態にも冷静に対応できるようになるので、訪問看護で行ったときに、こんなことがありましたが大丈夫でした、と報告を受けるようになったりするのです。利用者さんとご家族、みなさん本当に頼りになります。

働きやすい職場って…

訪問看護ステーションに転職するとき、どこに就職するか悩みました。
たくさんあるので、どうやって選べばいいのかわかりませんでした。

とりあえずホームページをみたり、病棟で過去に在宅で働いていた人に聞いてみたりしました。一度、その先輩にお願いして知っているステーションに1日見学させて頂きました。

色んな情報収集を得て、私が就職前に決めていた条件は、
・スタッフや歴史が若いステーションであること
新しいことを取り入れやすかったり、電子カルテなど時代に則った環境がよかった。
その分、教育環境や指導環境が未熟かもしれないことは承知のうえでした。若いところは何となく熱い想いがありそう、というのも一つの理由だったと思います 笑

・中規模の事業所であること
病院の時は、知らない間に方針が変わり、病棟にも影響が。今考えれば国の政策に則っていただけですが、当時は何故変わったのか理由が聞けないことが嫌だったのです。
社長、というか組織の長の考えが聞ける規模の事業所がよかった。

・在宅看取りを積極的にしていること
がん専門病院や緩和ケア病棟で勤務していたので、自分のやってみたいことでもあり、経験が生かせるかなと考えていたので。

結局、病棟で一緒に働いていた先輩や先生からの情報があって一緒に働くことになり今の場所にいます。

今の職場は、就職前に希望していた条件を満たしているなと思います。

 

働いてみて、一番大事だと思うことは

・利用者さんのことを一人で抱え込まないでいられる環境であること。
一人で訪問する訪問看護、その時々で一人でアセスメントし判断するを積み重ねていきます。迷うことも多いです。他の看護師だったらどうするかな、これが最善なのかな…。
もやもやしながら事務所に帰ってきた時に、相談しやすい環境であること。
働いてみないとわからないかもしれないけれど、ポリシーとして利用者さんの利益を一番に考えているか、とか、必ず事務所に寄る体制であるか、とか。

今の職場では一人で抱え込まないように皆が気を配っていると感じます。
いつでも誰かがいるので、帰ってきて悩んだことや、もやもやしたこと
腹が立ったこと。もちろん、100%というわけではないけれど事務所で同僚に相談することが出来ているかなと思います。

私には合っている職場ですが、みんなに合っているかと言うとそうではないと思います。
小規模でまだ発展途中の事業所では、労働環境や業務などなど、色々と整っていないところもたくさんあります。

色んなステーションが、色んな個性を出しています。
皆さんはどんな訪問看護ステーションで働きたいですか?

 

利用者さんと大笑い

90代で、いわゆる高齢者サービス付き住宅といわれる施設で一人で暮らしている方。
疾患のため腎瘻カテーテルが入っています。認知症もあるのですが、もちろんしっかり出来ている部分もあり、とても可愛らしく、素敵な女性です。

カテーテル脇からの漏れがあり、次回のカテーテル交換まで毎日訪問することになりました。私は普段担当ではないのですが、毎日訪問になると担当に限らず訪問時間が取れるスタッフが訪問します。
訪問し体温測定の声かけすると、ご本人がご自分の体温計を取り出しました。
体温計をケースから取り出すと表示画面に36.8と書いたシールが貼ってあります。
よく画面を傷つけないように購入時に貼ってある透明のシールです。

「このシール取りますね。」


「あら、嫌だ。(大笑)だから最近測ると毎回同じだったのね。壊れてるのかと思ってたのよ。よく見たら36.6にも見えることもあるんだけど、嫌だわ〜(笑)」

確かに、ご本人が尿量や体温を記録している用紙ではほとんど、36.8度となっています。おそらくたまに違う数値の時は、訪問看護できたナースが測った数値の様子。

二人で大爆笑!!
「たまに違う人の目が入るって大事ね〜」と、ご本人。

休日の出勤だったのですが、ほのぼの気分になった訪問でした。

 

 

雪が降った、訪問看護は・・・?

先週初め、関東は数年ぶりの大雪に見舞われました。勤務している地域でも午前中から雪が降り始めました。
11時からの訪問のお宅に入ったころに雪が降り始め、帰るころにはお庭が白く覆われているのをみて、利用者さんと一緒に驚いてしましました。

振り返ってみると、4年前に訪問看護を始めた年の冬にも雪が積もりました。車の運転が下手だった私は(訪問看護の仕事をきっかけに10年来のペーパードライバーから卒業…)当然雪の中の運転なんてしたことがなく他スタッフからかなり心配されていました。訪問件数が少なかったこともあり、他スタッフと同行して運転してもらったり、電車で移動したりと雪の中の運転はしなかったような気がします。
今回も慣れない雪の中での運転になるので、運転が苦手な人は他スタッフが訪問の隙間にピックアップして対応することもありました。

雪だったり台風だったり天候がヒドイ時の訪問看護はどうしているのか。
私の事業所では、状態が落ち着いている利用者さんには電話で日時の変更を相談させてもらうこともあります。
しかし終末期の患者さんが多いので天候に関わらず訪問が必要な利用者さんもいます。その時には、運転中なにかあってもパニックにならないように、お宅の環境によっては二人訪問で調整したりと、慎重に対応しています。

今回は、坂道が多い住宅街にお住いの利用者さんで、終末期の方だったので訪問にいく時に、タクシーが横滑りしながら坂を登ってくる様子をみて先輩と二人でぎょっとしながら運転していました。無事に到着しただけで一仕事した気分になってました。

まだ、道の端に残っているガリガリに凍っている雪を見る度に、早く溶けてほしいと思う今日この頃です。