訪問看護って奥が深い!

30代、ナース。独身で仕事にプライベートに好きなことばかりやっています。4年前から立ち上げに関わった訪問看護ステーションで働いています。訪問看護の素晴らしく奥が深い日常をお伝えします。

私がぬか漬けをしているワケ

数ヶ月前からぬか漬け生活をしています。
憧れはあったけれど、自分で一から始めるまでは気持ちが動かなかったのに、
我が家の冷蔵庫にぬか床があるワケ。

利用者さんから頂いたのです。
数十年物のぬか床をわけていただきました、形見分けという感じで。

乳がん、皮膚転移、肺転移のMさん
娘さん二人と同居されていましたが、娘さんそれぞれとMさんの関係は良いのですが、娘さん同士はあまり関係性はよくないようでした。

いつも、私たちスタッフ間や看護師と医師との関係が良いとお褒めをいただいていました。
下肢リンパ浮腫に対して、通院でのマッサージや手術も受けてきたMさん。訪問看護でも
初めのころは下肢のリンパ浮腫に対してマッサージと環境調整で訪問していました。

色白で可愛らしいMさん
料理が大好きで、大きな甕のぬか床でつけたキュウリを時々お土産にくれました。
マッサージの間は、料理のこと、ぬか漬けをいつかやってみたいと思っている話しで盛り上がることが多くありました。いつか、ぬか床分けてあげるね、と言われていました。

少しずつ病状が進行し、呼吸困難やADLの低下が見られてきました。
ウトウトする時間が増えてきて、残りの時間が数日と予測されていたので、出来るだけご家族には側にいてもらうようにお話ししていました。

訪問看護で身体をふき、着替えをし終わったあと。Mさんはやはりウトウトされていました。私が、「また来ますね」と声をかけると、
突然ハッと目をあけて、「ぬかを持って行ってー」と。家族みんなの前で。
思わず、みんなで笑ってしまいました。
その数日後、Mさんは自宅で息を引き取りました。

10日後くらいに、慰問でご自宅に伺いました。
Mさんのことを偲び、ご家族からもぬか床を持って帰って下さいと言っていただきました。

今もちゃんとぬか床あります。
サボりがちの私でも美味しいぬか漬けが出来るのは、Mさんが長く大事に手をかけてきたお陰だなと思います。

これは絶対にカビさせるわけにはいかないと、これからも楽しんでいきたいと思います。

訪問看護での医療処置 ※CVポート編

CVポート。
医療者ならば聞き慣れている言葉ですが、医療者ではない人達にはイメージがわかないかもしれません。
口から栄養を取れない場合に、鎖骨の下にある太い静脈にカテーテルをいれて、そこから高カロリーの点滴を入れます。皮膚の下にポートという土台を埋め込み、カテーテル感染がおきにくいようになっており、表面上は皮膚で覆われています。
自宅では針刺し、点滴の交換、点滴ルートの交換、カフティーポンプ(在宅用の点滴ポンプ)の管理といった処置が必要になります。

私のステーションは癌の利用者さんが多いので、私が訪問看護で関わるかたでCVポートを利用しているのは、比較的若い世代の消化器系や耳鼻咽喉科の癌のかたで口から栄養をとることが難しくなり、CVポートからの高カロリー輸液をしている方が多いです。
抗がん剤治療のためにCVポートを挿入している方もいらっしゃいます。
これは訪問看護ステーションでどのような利用者さんが多いかによって変わると思います。

40〜60代の若い世代の方が多いので、基本的に針刺し以外の処置はご家族ができるように指導していきます。退院時には病院でルート交換とカフティーポンプの管理、生食ロック、抜針方法を教わってきている方がほとんどで、針交換は1回/週、訪問看護で実施することが多いです。少なくとも点滴交換とポンプの扱い方、注意点さえ指導してくれていれば、あとは自宅で指導していくことができるので、一日でも早く退院したい人の場合は病棟の看護師さんと指導内容を確認しあっていきます。

どんなに理解がスムーズなご家族でも、やはり自宅で、自分一人でやるということに初めはとても緊張されています。初めて行うときは訪問看護の時に一緒に手順を確認し、困ったときにはいつでも電話で連絡してよいとお話ししています。カフティーポンプのパンフレットなんかは写真付きでとてもわかりやすく作られており、初めの頃は私も一緒にパンフレットを見ながらやっていました。

ポンプのアラームがなった、ルートに空気が入った、など初めは色々な不安があり電話で相談されることもありますが、ご家族はけっこう逞しくて、電話での口頭説明で対応できることが多いのです。もちろん、訪問が必要な状況の時には臨時訪問で対応します。
処置に慣れてきて、予想外の事態にも冷静に対応できるようになるので、訪問看護で行ったときに、こんなことがありましたが大丈夫でした、と報告を受けるようになったりするのです。利用者さんとご家族、みなさん本当に頼りになります。

働きやすい職場って…

訪問看護ステーションに転職するとき、どこに就職するか悩みました。
たくさんあるので、どうやって選べばいいのかわかりませんでした。

とりあえずホームページをみたり、病棟で過去に在宅で働いていた人に聞いてみたりしました。一度、その先輩にお願いして知っているステーションに1日見学させて頂きました。

色んな情報収集を得て、私が就職前に決めていた条件は、
・スタッフや歴史が若いステーションであること
新しいことを取り入れやすかったり、電子カルテなど時代に則った環境がよかった。
その分、教育環境や指導環境が未熟かもしれないことは承知のうえでした。若いところは何となく熱い想いがありそう、というのも一つの理由だったと思います 笑

・中規模の事業所であること
病院の時は、知らない間に方針が変わり、病棟にも影響が。今考えれば国の政策に則っていただけですが、当時は何故変わったのか理由が聞けないことが嫌だったのです。
社長、というか組織の長の考えが聞ける規模の事業所がよかった。

・在宅看取りを積極的にしていること
がん専門病院や緩和ケア病棟で勤務していたので、自分のやってみたいことでもあり、経験が生かせるかなと考えていたので。

結局、病棟で一緒に働いていた先輩や先生からの情報があって一緒に働くことになり今の場所にいます。

今の職場は、就職前に希望していた条件を満たしているなと思います。

 

働いてみて、一番大事だと思うことは

・利用者さんのことを一人で抱え込まないでいられる環境であること。
一人で訪問する訪問看護、その時々で一人でアセスメントし判断するを積み重ねていきます。迷うことも多いです。他の看護師だったらどうするかな、これが最善なのかな…。
もやもやしながら事務所に帰ってきた時に、相談しやすい環境であること。
働いてみないとわからないかもしれないけれど、ポリシーとして利用者さんの利益を一番に考えているか、とか、必ず事務所に寄る体制であるか、とか。

今の職場では一人で抱え込まないように皆が気を配っていると感じます。
いつでも誰かがいるので、帰ってきて悩んだことや、もやもやしたこと
腹が立ったこと。もちろん、100%というわけではないけれど事務所で同僚に相談することが出来ているかなと思います。

私には合っている職場ですが、みんなに合っているかと言うとそうではないと思います。
小規模でまだ発展途中の事業所では、労働環境や業務などなど、色々と整っていないところもたくさんあります。

色んなステーションが、色んな個性を出しています。
皆さんはどんな訪問看護ステーションで働きたいですか?

 

利用者さんと大笑い

90代で、いわゆる高齢者サービス付き住宅といわれる施設で一人で暮らしている方。
疾患のため腎瘻カテーテルが入っています。認知症もあるのですが、もちろんしっかり出来ている部分もあり、とても可愛らしく、素敵な女性です。

カテーテル脇からの漏れがあり、次回のカテーテル交換まで毎日訪問することになりました。私は普段担当ではないのですが、毎日訪問になると担当に限らず訪問時間が取れるスタッフが訪問します。
訪問し体温測定の声かけすると、ご本人がご自分の体温計を取り出しました。
体温計をケースから取り出すと表示画面に36.8と書いたシールが貼ってあります。
よく画面を傷つけないように購入時に貼ってある透明のシールです。

「このシール取りますね。」


「あら、嫌だ。(大笑)だから最近測ると毎回同じだったのね。壊れてるのかと思ってたのよ。よく見たら36.6にも見えることもあるんだけど、嫌だわ〜(笑)」

確かに、ご本人が尿量や体温を記録している用紙ではほとんど、36.8度となっています。おそらくたまに違う数値の時は、訪問看護できたナースが測った数値の様子。

二人で大爆笑!!
「たまに違う人の目が入るって大事ね〜」と、ご本人。

休日の出勤だったのですが、ほのぼの気分になった訪問でした。

 

 

雪が降った、訪問看護は・・・?

先週初め、関東は数年ぶりの大雪に見舞われました。勤務している地域でも午前中から雪が降り始めました。
11時からの訪問のお宅に入ったころに雪が降り始め、帰るころにはお庭が白く覆われているのをみて、利用者さんと一緒に驚いてしましました。

振り返ってみると、4年前に訪問看護を始めた年の冬にも雪が積もりました。車の運転が下手だった私は(訪問看護の仕事をきっかけに10年来のペーパードライバーから卒業…)当然雪の中の運転なんてしたことがなく他スタッフからかなり心配されていました。訪問件数が少なかったこともあり、他スタッフと同行して運転してもらったり、電車で移動したりと雪の中の運転はしなかったような気がします。
今回も慣れない雪の中での運転になるので、運転が苦手な人は他スタッフが訪問の隙間にピックアップして対応することもありました。

雪だったり台風だったり天候がヒドイ時の訪問看護はどうしているのか。
私の事業所では、状態が落ち着いている利用者さんには電話で日時の変更を相談させてもらうこともあります。
しかし終末期の患者さんが多いので天候に関わらず訪問が必要な利用者さんもいます。その時には、運転中なにかあってもパニックにならないように、お宅の環境によっては二人訪問で調整したりと、慎重に対応しています。

今回は、坂道が多い住宅街にお住いの利用者さんで、終末期の方だったので訪問にいく時に、タクシーが横滑りしながら坂を登ってくる様子をみて先輩と二人でぎょっとしながら運転していました。無事に到着しただけで一仕事した気分になってました。

まだ、道の端に残っているガリガリに凍っている雪を見る度に、早く溶けてほしいと思う今日この頃です。

 

自宅で過ごすを本人と家族が選ぶ時 〜Yさんとの関わり3/3〜

徐々に全身状態が落ちていましたが、娘さんが1歳児のお孫さんと一緒に介護のため一時的に戻ってきたり、本人の妹さんが泊まり込みで介護を手伝ってくれたりと、ご主人と一緒にみなさんで過ごされました。

ある時、排便リズムが変わり頻回なオムツ交換が必要な日が数日続きました。その時に、ご本人が『病院に行こうかな』と。みんなに迷惑をかけるから、みんなが大変だからと。
それを聞いたお父さん、
『病院には行かなくていい』
と、言い切りました。看護師に来てもらい便処置の頻度を増やして対応していくことになりました。

本人が嬉しいと思ったか、辛いと思ったかはわからなかったですが、私は初めはYさんから詰め寄られてやっと在宅を選んだご主人が、自宅で過ごさせたいと自ら意思表示してくれたことに感動してしましました。
ご主人の言葉で、在宅療養の体制を再度整え、訪問看護の回数を増やし、その都度排便ケアをして出来るだけ家族だけの時にできるだけ排便が出ないように対応しました。

意識が混濁する時間も徐々に増えていましたが、1歳のお孫さんをベッドに乗せるとすごく喜んでいたそうです。子供の存在って大きなパワーですね。本人だけでなく介護者の癒しにもなっていました。コワモテのお父さんがお孫さんを前にデレデレのおじいちゃんになっている姿はとても微笑ましく、訪問診療で来ていた医師と思わず笑ってしまいました。

Yさんは、最期まで家族に見守られてご自宅で息をひきとりました。

2ヶ月後、慰問でご自宅に行った時に、ご主人が、色々と先をみて環境を整えてくれたことが安心だった、自宅で看取れてよかったと話してくれました。そして、娘さん、お孫さん、妹さんに、私も入れて一枚写真を撮ってくれました。まるで家族写真に入れてもらったような、みんなが笑っている写真でした。

 

心に残る家族の姿を見せてくれたYさんとの出会いに感謝です。

 

自宅で過ごすを本人と家族が選ぶ時 〜Yさんとの関わり 2/3〜

段々と通院が難しくなっていましたが訪問診療はまだ希望されませんでした。ご本人としては通院できているということが支えでもあったので、どのタイミングで訪問診療に切り替えるのか、私も迷いながら関わっていました。

ある朝、状態を聞くために電話したところ咳や便秘で調子が悪いとのこと。臨時で訪問することになりました。訪問すると、電話で話していたことを忘れていたり、今まで出来ていたことをするのが大変になってきているとの話がありました。

今だ、と思い、緩和ケア病棟の入院を考えるか、自宅で過ごす方向で調整してよいのか、Yさんがどこで過ごしたいと思っているかを聞きました。Yさんは出来るなら最期まで家で過ごしたいと。あとはご主人の気持ちを確認したいと。
ちょうど、ご主人が外出から戻られました。私は状況を説明しご本人は自宅で過ごしたいと希望しているところまでお話ししました。ご主人は、『はい、わかりました。』と。

そこでYさん、ベッドに寝たまま『そうじゃなくて、お父さんはどう思ってるの?!』と!
お父さん『入院のほうが安心だけど、お母さんの希望するようにするよ』
コワモテのお父さん、Yさんに言葉で詰め寄られてる感じでしたが、その言葉をきいてYさんは安心したように見えました。でもご主人は本人のいないところで、やはり入院のほうが安心と繰り替えされていました。
Yさん、ご主人に訪問診療に切り替えることを提案し、翌日の午後に医師の診療を開始してもらえることになりました。

その後は訪問診療が始まり、訪問看護の回数を増やしたり、介護保険を利用してリビング横にベッドを設置し、自宅で過ごすために環境調整していきました。
ご主人は、本人に色々と言われながら(笑)介護を頑張ってくれました。技術職らしく色々な介護用品を工夫したり、ウロストミー物品を私達が使いやすいように整理してくれたり。

ある時訪問したら、本人のベッドの横のパソコン前にご主人が座り、二人で写真をみていました。何をしているのか聞くと、遺影の写真を選んでいると。
けして暗い空気ではなく、むしろ明るく笑いながらです。写真を見ながら色々な思い出話しも出てきます。Yさんはきっとこうやって色んな準備をご主人としたかったんだなと思ったのと同時に、具合の悪い人を介護していくって生活なんだな、死を意識するのは特別なことではなくなっていくんだな、とその場面のことはとても印象に残っています。